古宮夏希歌詞集


・秘密
・中秋2丁目
・眼差し
・夜の中を歩く
・夢
・夏が過ぎていく
・6月
・春とアルコール
・353
・この夜に
・好きだった きみのこと
・アイドントノー
・天国か地獄か
・夏の魔物
・幸せだったのかもしれない
・思い出
・くよくよするなよ
・いい時
・満月
・ロックンロール
・同じところ
・青い空
・そのやり方しか ぼくら知らない
・今になって きみを好きになって
・窓の外の光と闇
・夕暮れ
・泡
・きみの前に
・冬空
・晴天
・どうなったとしても
・こころ
・何もかもが
・風を切っている
・世界はきみの話をした
・10数えるうちに
・まっ白な影
・夜のままがよかった
・一秒一秒
・夏の思い
・ぼくは今生きていて きみと一緒に眠っている
・多摩川を渡って
・何も話してはくれない
・すべては無意味で すべては愛おしい
・気力もないし 心も動かない
・夜の匂いの中
・うたう方がいいと思った
・東風
・新しいうた
・この情けなさを最後に
・夏のはじまりの匂い
・そんなふうにきみが 思っていてくれたらいいのに
・過ぎてしまった時
・手紙
・考えている
・もう少し
・きみは変わってしまった
・冷たい手
・愛をこめて
・いつの間にか
・終わり
・ぼくの友達
・涙が胸を伝っていく
・最後の言葉
・夕暮れの時
・愛おしさ
・さみしい朝
・千代
・春のはじまり
・想像と夕暮れ
・胸の中で、夜空で
・旅への思い
・郷愁
・ぼくは変わってきたらしい
・夜の海
・夏の夜の友達
・ぼくは泣いている
・夢の中の春
・その先の向こう
・風景
・素敵な世界
・夕焼けを追いかける
・夕方の匂い
・光
・ぼくらの情熱 、ぼくらの愛
・今と昔
・風はいつ吹いてくるのだろう
・夜
・気持ちはめぐる
・涙の川
・15才
・多摩川サンセット
・ひそやかな感覚
・まっ暗い部屋で
・河川敷にて
・道の灯
・湿り気のある夜
・闇
・青色の旅人
・初秋
・ぼくは旅に出たいと思っている
・少年
・ちゃんとつながっている
・窓の外
・水たまりの中に希望が揺れている
・娯楽
・遠い川の朝
・夜風はぼくらをやわらかくしてくれる
・きみの星のカオを見送って
・青色
・遠い終わり、もとどおりの一日
・次の次の次
・つまらない話
・冷えた夜空
・風
・新しい町の夜
・心の中
・ぼくは自転車で走り過ぎる
・ひとりで居た時のこと
・夢
・夏休み
・ハヤオ
・いつもそんな風景だった
・シンバン
・夕暮れ
・定期
・雪が降る前
・フラッシュバック
・ライトの中の夜は永遠に
・朝野球
・花火師
・青調合
・焼尻
・雨の日の花火
・白くする



秘密

どうか ぼくの名前を呼んで
あと一歩を 縮める瞬間
素知らぬ顔できみは
また どこかへ行ってしまうのかい

でも ぼくは 惑わされて
ずっと待っているんだよ
疲れ果てて ヤケクソになって
そしたら きみが
温もりを投げかけてくる

笑ってみせる
心を許してくる
秘密を ぼくだけに
そして ぼくは 動けなくなる
どうか ぼくの名前を呼んで
あと一歩を 縮める瞬間を

でも また きみはどこかへ行ってしまう
心だけを ここに残して
ぼくは振り回されっぱなし
ずっときみのことを考えて
バカみたいに落ち込んでいく

そしたら きみが
温もりを投げかけてきて

笑ってみせる
心を許してくる
秘密を ぼくだけに
そして ぼくは 動けなくなる
どうか ぼくの名前を呼んで
あと一歩を 縮める瞬間を


中秋2丁目

きみの名前 呼び続ける
この道通る度
きみの名前を呼ぶんだよ
ひとりでも
ひとりじゃなくても
忘れない 覚えている

大きな枯葉を踏んで
ふざけているだけでいい
楽しければいい
瞬間 瞬間

冷たい手足と そして鼻先と
重ね合わせる心は
朝でも昼でも夜でも
ぼくらを深く包み込んで 持ち上げてくれた
何にも気づけなくても
ぼくら笑っていれば それでいい

やってくる季節 やってくる時間
やってきて 過ぎていく
瞬間 瞬間


眼差し

きみとの会話が 空気の中に浮かぶ
さみしそうな ぼくの返事を一度最後に
曇り空に静けさが抜けていく
きみは気づいているのだろうか
本当は
目を見れば わかる気がする

そばにいなくても
瞬間 楽しかったんだから

しばらくは きっと
きみと歩いていた時間を思い出すだろう
きみが心を許した瞬間の眼差しを
思い出すだろう

そばにいなくても
きみの言葉が心を巡っている
きみの表情が胸を巡っている


夜の中を歩く

夜に咳がとまらなくなって
昔読んだ本を 再び読んでいた
ずっと何かをたどっているような
そんな感覚で ただ 時間が過ぎていった
きみのことが どうしようもなく好きで
だんだん 苦しくなっていくのは わかっていた

ずっと ぼんやりと 同じ感覚
水面を平行に泳いでいく
つまらない顔
きみを じっと 見つめたいのに

拠り所がなくて
掴むものもなくて
行き場のない あたたかい夜の匂い
ずっと同じ 日々をくりかえしていく
きみのことが好きで
どうしようもなくて
かなしい

裏返してみたら
急に平気になるのかな
辛いのはわかっている
ただ 少しだけ 紛らわせるものがあるなら
拠り所もない
掴むものもない
何度も訪れる 夜の中を歩く
きみのことを 考えている
諦めようと思って
でも また 考えている
きみの心の中にいたい
つまらない また 夜の中を歩く


きみの手を 握ったような
そんな まぼろし
もう ずっと 夢でしか会えなくて
きみが手を 握ったような
そんな感覚で 目が覚める

それっきり それだけになって
ガランとした 朝
遠くで呼ぶ声も 聞こえなくて
足の裏の生ぬるさだけ
どんな顔もできないや
ぼくは ただ
それっきり それだけになる

漠然と ゆううつで
ただ ずっと そんな感じ
今も ただ そうなだけ
きみに会いたいな と思う

きみの手を 握ったような
そんな まぼろし
もう ずっと 夢でしか会えないのなら
毎日 でてきて
ぼくの中のきみは いつもやさしい

そんな感覚で 目が覚める
そんな感覚で 目が覚める

余韻を たどっている
消えていく 余韻をたどっている


夏が過ぎていく

いつのまにか 動けなくなっていて
どこまでも 行けるはずなのに
いつのまにか 泣きたくなっていて
いつのまにか 解き放たれたくなっていた
きみのうたで 思い出して
胸が苦しくて どうしようもなくて
きみの体が 全部を解き放って
ぼくは そのまま 連れて行かれたかった
ぼくは 気づいてしまうから
わかってしまうから
きみとの夏が過ぎていく


6月

夕暮れのこの街だ
ぜんぶ覚えてる
なんだかせつなくなるな
きみは とりあえず 元気なんだな
ずっと焦りながらも

きみの言ってたことも 思い出す
あの時のきみはやさしくて
ぼくはすっかり うれしくなってたんだよ
ふたりに吹いた風だって
また吹いてくることもあるだろう
そんなふうに ただ思っていたいだけ
少しはマシに 思っていたいだけ

少し寒いくらいがいい
ほらこの街の夕暮れだ
だからせつなくなる
きみの目が ぼくの目を見ていたことを思い出す
またそんな時もあるだろう
ただ そう思っていたいだけ
少しはマシに 思っていたいだけ


春とアルコール

春に酔っぱらって 自転車で
ふたりで ダラダラ 走っていた
もう 今はやめちゃった あの子のうた
口ずさみながら 走っていた

慣れない この町の日差しも
酔っぱらえば 少しはマシだったっけ
それとも きみがいたから だったのかな
この田舎くさい風景が
春とアルコールにぼやけて
今じゃ 胸をしめつけている

春に酔っぱらって 自転車で
ふたりで 河川敷を走っていた
もう 今は死んじゃった あの人のうた
口ずさみながら 走っていた

スピード上げて その先まで突っきって
見える風景はぜんぶ アルコールで飛んでいった
きみは笑っていた ぼくも笑っていた
あの頃も辛かった気がするけど
今になっては まだマシだったのかな
この田舎くさい風景が
一緒に居れたことが
今じゃ 夢のようだよ


353

きみのうたを口ずさんで
時間が過ぎるのを待っていた
頭が痛くて 何もしたくなくなる
これ以上 話すと
情けない言葉ばかり 出てきてしまう気がするよ

今 自分がしてる顔
気づいて さらに落ち込んでしまわないように
そう気づいたら とりあえず 真冬の青い空
ぜんぶ乾いていて やさしさなんて持てそうにない
好きだった人のこと ちょっと思い出して
また すぐに忘れて
もう二度と 思い出すことがないようなこと
思い出した

だから もう少し ここにいて
少しだけ 静かにして
じっと 見つめさせてほしいんだ

きみの声は なんでさ こんなに
ぼくを持ち上げてくれるの

だから このまま 連れて行ってくれよ
きみだから できるんだよ
わかるかい?
だから このまま 連れて行ってくれよ
何も考えたくないんだ

目の中を突き抜けていった青
いつでも かなしくなれる気がするよ
気を抜くのが こわいんだ
つまらなくなるのが こわいんだ
今は ただ そうなんだ
きみは何を許すの?
ぼくは何に許されたいの?

だから もう少し ここにいて
少しだけ 静かにして
じっと 見つめさせてほしいんだ


この夜に

今 一瞬
誰のことを思い出したんだっけ
まだ 息が白くならない この夜に
見つめるだけの景色は目の前に
充分 思い出す 思い出す 思い出す
とりあえず 手放しで
この夜にダイブしていこう

きみの写真持ってた
動かない きみの写真持ってた
会って話をしている時の きみの顔
思い出したい 思い出したい
思い出したいのに
はっきりと

靴ひもをほどいて
踏みしめる地面はなくても
足の裏に夜の冷たさを感じて
なんだか身軽になった気分になるだろう?
こうしているとさ

きみの写真持ってた
動かない きみの写真持ってた
会って話をしている時の きみの顔
思い出したい 思い出したい
思い出したいのに
はっきりと


好きだった きみのこと

好きだった きみのこと
好きでいたかっただけなのかな
時間は少しあったけど
何もしないで過ぎていった
いつも いつも
その瞬間に手に入れられるものなんてない
好きだった きみのこと
まだ 好きでいたかったけど
ぼんやり冷めていくのが
さみしかった

好きだった きみのこと
本当に不思議なくらい 好きだったけど
それが うれしかったのかな
だから
どうなったとしても
ずっと 引きずりたかったけど
ぼんやりと 冷めていくのが
さみしかった


アイドントノー

きみの声が聞こえてくる
ぼくらは どこまでいって
どこで 離れてしまったのか
終わりがいつ訪れたのか
ぼくは 気づかないまま
ただ 必死だった
心をまた通わせようと
何度も きみを呼んだけど
姿は見えるのに
ふたつの体と心は
すれ違うだけだった

心をまた通わせようと
何度も きみを呼んだけど
姿は見えるのに
ふたつの体と心は
すれ違っていった
ぼくには わからない
どうすればよかったのか
ぼくには わからない
どうすればいいのか


天国か地獄か

大丈夫になったり ダメになったり
くりかえして
結局持ちこたえて 今いるのかな
天国か地獄か
有頂天かどん底か
自分の気持ちに振り回されっぱなし
笑えるうちに笑っていよう
ひとりぼっちで ひとりぼっちのきみに
とても とても 疲れてしまうけど
ぜんぶ失敗して
気づいたら最悪
ヒマつぶしも もう限界

冷えた空気が
頬を撫でて
ぼくは一瞬
安心する
ここで終われたら
いいのに


夏の魔物

夜の光たちの中 ぼくらふたりで居たんだ
遠くの工場 行き帰りの飛行機
月がきもちわるいよって きみがぼくに言う
水面が微かに 秋を連れてくる
ぼくらなんとなく しばらく一緒に居たんだ
きみとぼくの肌に 最後の夏の風が触っている
遠くを見つめて きみがそれをぼくに伝える
きっと 大事なこと どうしようもないきみが
ぼくに やさしく 触れてくれるんだ
なんだか 夢のようなのに
離れずに ぼくは きみと居れた


幸せだったのかもしれない

今 振り返ってみれば
ぼくは あの時 幸せを感じていたのかもしれない
ぼくは あの時 幸せだったのかもしれない
幸せというものがあるのなら
そうだったのかもしれない

ぼくは 行き着いたと思っていた 安心していた
だけど
やっぱり そんなことってなくて
何日か時が過ぎれば
ぼくは また 同じ気持ちにもどっていた
手に入れたと思っていたけど
そのもの自体がないような気もする
瞬間はいつだって 本当だけど

頭がじいんとして
誰かに触れられているような感覚と
目の奥がぬれているのを
ぼくは ぼんやり思い出していた

ぜんぶ これでよかったと言うしかないけど
これでよかったなんてことは ないと思う
欲望は ぼくを 苦しめるだけだけど
欲望がないと 生きていけない気がする

今 振り返ってみれば
瞬間の幸せを ぼくは感じていた
無くす辛さと 手に入れられない辛さ
ぼくは 今 ただ ただ 辛いだけだ

頭がじいんとして
誰かに触れられているような感覚と
目の奥がぬれているのを
ぼくは ぼんやり思い出していた


思い出

きみに手紙を書きそびれて
どんどん 季節が過ぎていって
感動は 薄れて
すべては思い出になって 忘れていく
そして また
ダメになる ダメになる
彼の夢の中で できた うた
きみは もう 彼を要らないって
はじめから こうなると 思っていたよ
はじめから こうなると 思っていたのかな

だから もう
彼を好きになってもいいんだね
みんなが思っているよりも それはずっとやばいやつだ

誰もいい思いなんてしていなかった
ぶってるやつら バカみたい
元に戻るだけ 元に戻っただけ

つよい気持ちも よわくなって
ぜんぶが面倒くさくなる
目覚めれば ゆううつになる
戻って 戻って 戻って
何だったんだろう 何もなかったのか
夕立の匂いも 行き場がない
だけど まだ やさしい夜の雨を待つのかい?


くよくよするなよ

きみに おもしろくないと 言われてしまった
そうだね ぼくは ずっと
同じことやっているから
バカはなおらないのだろうね
ずっと 同じようなこと やっているから

くよくよするなよって
ディランがうたっていた
きみの声聴いてたら 泣けてきたんだ
情けないなあって 今はそれだけだよ

口ごもりながら それでもうたにして
ぼくは 一体 何から救われようとしていたのか
ただ 自分のことしか考えていないだけなのに

でも
くよくよするなよって
くりかえし 耳を傾けていた
情けないこと くりかえしながら


いい時

よかった時が思い出せない
こうなってしまったら
いつも だいたい わかっているけど
だから いい時に なるべく たくさん
いい時もあれば わるい時もあるって
それだけのことだよ
傷が浅いうちに やめておけばいいのにね

酔っ払って わかんなくなって
いつのまにか 悲しくなっていても
覚めては また くりかえすだろう
変わらないものなんてないけど
ずっとずっとずっと
みじめな気持ちだけ つづいていく
相も変わらず ぼくは
ずっと同じことやっている

また落ちる時が来るんだろうって いつも思っている
いい時だって 心の隅で
わかっていると こわくなる むなしくなる
だけど いい時に なるべく たくさん

ああ もう ちょうどいいとこで
やれればいいのに
ちょうどいいとこで
やれればいいのに


満月

畦道を歩きながら
もう駄目かなって思っていた
喉に伸びた手は
行き場を失っていた
季節だけが揺るがなく
時を刻んでいた
そこには満月が
何が変わったのだろうか


ロックンロール

足りない物なんて 何もないから
だから これでいいだろう
何もなかったことと同じ
そんなふうなふり できるかな

夜でも季節でも
きみと越える瞬間がたまらなかった
きっと何も忘れられないね
笑っているのは 笑っちゃうから
いつでも こんなこと

たくさん言うことあったけど
一言で言える言葉をさがそう
きみが ここにいる間に
心をつかみあって それを確かめあってうれしがっている
きみが ここにいる間に
ぼくは死ぬのを待っている

きみとぼくの同じ部分が
重なり合うのを待っている
瞳だけが すべてを語っている
だから ぼくは 動けなくなる

届くべきものが
ちゃんと届いているのなら
それでいいのさ
何も考えなくていいよ
すべては いつだって ここにあるだけ


同じところ

懐かしい感覚に包まれて
死にたくなくなる時
ぼくのすぐ隣に
ほんとうに すぐ隣にいる
きみの手のあたりを見ていた

でもまた酔いは覚めて
目が覚めて ぜんぶ覚めて
ただ ぼんやり ゆううつになる

つよい気持ちを掴んで
突っ走って行けば
体は汗をかいている
ぼくは 同じところを
行ったり来たりしているだけだ
上がったり下がったりしているだけだ

きみのことが好きだと言って
体のどこかに触れてみたかった
懐かしい感覚に包まれて
きみの手のあたりを見つめていた


青い空

ただ ぼんやりと
思い出しているだけ
あの日のぼくらを
過ぎた瞬間を
ただ 思い出しているだけ

こんなに晴れていると
死にたくなる
真っ青で
遠く突き抜ける感覚だけが
体を通り過ぎていく

目の前のことは
ただ ただ 面倒くさくて
ぼんやり 思い出している
あの日の空
意味なんかない
ただ 思い出しているだけ
あの日のぼくらを


そのやり方しか ぼくら知らない

きみはもう 大丈夫になったって
きみはもう 救われたってさ
そんな気持ちになったことない
卑屈になっても 腐る一方

やっと いいうたできたじゃない
やっぱり それがすべてなんだな
始まりと終わりが わからなくなる
先と後がわからなくなる
皮肉なもんだな
そのやり方しか ぼくら知らない

確かに聞こえたんだ
きみがぼくを 愛しているって
何度だって確かめたかった
きみがぼくを 愛しているって

いつまで 自分で自分を持ち上げるのか
つまらないって そういうことかい
どうしたって 胸が苦しい
皮肉なもんだな
そのやり方しか ぼくは知らない


今になって きみを好きになって

今になって
きみを好きになって
きみの言うこと ぜんぶ正当化して
正当化すればするほど
ぼくは狂っていく
そんな夢みたいな夢をみる

意味もないし 価値もない
だけどこれだけに 救われている
今になって
きみを好きになって
辿り着く場所
ぼくは安心している

きみの名前呼んでみるだけで
ぼくはすごくいい気分になる
それで大丈夫になる
簡単なもので
単純なもので
だけどそれも
今になってきみを好きになったから

世界と気分が同じように
なんだってどうにでもなる
そして ならなくたっていいし
そもそも
そこには はじめから なにもない

今になって
きみを好きになって
そんな夢みたいな夢をみる


窓の外の光と闇

昨日の今頃はきみといたのに
今日はもう ここにきみはいないじゃないか
ふたりとも頭がおかしいから
うまくいかないね
だけどきみの全部が好きだ
それしかわからない
それしかわからない

今日はきみといるのに
明日の今頃は ぼくは遠い街でうたっている
いつになったらうまくいくってうたっている

きみの側で眠りたいんだ
ぼくの側で眠っていてほしいんだ
窓の外がどうであったって
窓の外の光と闇の中で
何をどう言い間違ったって
繋がっていること信じているんだ
窓の外の光と闇の中で


夕暮れ

ぼくが捨てた生活が庭に漂っている夕暮れ
だから かなしいわけないよね
大丈夫だよってうたっている 空の奥
これからやってくるのが夜でも朝でも
大丈夫だよってうたっている 空の奥
ずっとひとりだった気もするし
そうじゃない気もするけど

だんだん暮れていくこの道に
きみの姿が浮かんで消える
浮かんで消える
浮かんで消える
きみの歩く道にも
ぼくの姿が浮かんで消える
浮かんで消える
浮かんで消えるのだろうか


赤いビールをふたりで飲んで
何を懐かしむ
きみが築き上げたすべてに
ぼくは涙しよう
調子にのり過ぎたか
でも 感覚なんてそんなに変わりはしない
きみが残したすべてに
ぼくが感じたものすべてに
感傷的にはなりたくないんだ
泡はいずれ消える
繋いだ感触だけが残る
日差しの角度
それだけで泣きそう
きみがぼくを見ていたから
ぼくはうれしかったんだ
もうだめだって思っても
何も変わらない
忘れることなんてできない


きみの前に

夕べ自分が話した 言葉の波を泳いでいる
目が覚めて きみの電話を待っている
今 季節がはっきりと
鼻先をくすぐっている

ぼくらは
自分の居心地のいい感覚の世界に向かっているだけ
だから
好きにやればいい
それだけのこと

ぼくは ただ
きみの前に
ぼくは ただ
きみの前に

波の中のさがしものは
見つからないまま 泳いでいる
眠っているきみを 想っている

目の前に
きみを描いていく
ずっと待っている
ぼくらの心は
波にさらわれていく

ぼくは ただ
きみの前に
ぼくは ただ
きみの前に
どんな時も
ぼくのところに来てほしい


冬空

妙な気分だったんだ
そんな風が吹いている気がした
きみと歩く夜空も
きみの部屋から見る冬空も
一瞬がすべて
ぼくは もう 動けないかもしれないね
妙な気分なんだ

一日一日過ぎていくうちに
ぼくはきみを愛おしいと思っている
一瞬のすべてが ぼくの心に入り込んで
居座って離れないようだ

匂いを吸い込んで
きみを思い出す
匂いを吸い込んで
いつかはっとする匂いが 風にのってやってくる

ぼくには本当がわからない
ぼくには見分けることができない
きみと歩いた夜空
きみの部屋から見た冬空
ぼくは ずっと 妙な気分さ


晴天

そんなこと きみに言われたことは
ないかもしれないけど
そんなことを 言われたような
感覚だけが残っている

きみは 確かに
ぼくの前で 笑っていたような気がする
それで ぼくは
呼吸をしていたような気がする

ぜんぶ 本当だけど
ぜんぶ 過ぎてしまったことさ

取り返しのつかない出来事が起こって
そして その後悔の中で
生きていくしかなくなったとして
それを伝える相手が
ぼくには いた

そうだ どうだっていいことの中で
ぼくは やり過ごせる術を持っていて
結果 ぼくは きみを やりこめてしまった

ぼくらが描くロマンチックの中で
ぼくらは
自分で自分を殺す
世界をうたう

ぼくらが一緒に過ごした
時間の匂いが
ただ ただ
風に吹かれていく

そんなこと きみに言われたことは
ないかもしれないけど
そんなことを 言われたような
感覚だけが残っている


どうなったとしても

理想の完成を想像して
何度も覗いては失望した隙間でも
いつの間にか埋め尽くされているように
すべては なるようになる
もしくは
なるようにならなくても
だんだん疲れてきて もうそれでいいやという気持ちになる

気に入っていた存在が
自分の体を喰い尽くしたとしても
それで 自分が崩れ落ちるまで気づかずに
胸をときめかせるだろう
そして それは 望みでもあるのだから

ああ いつだって 自分で自分を持ち上げて
心に風を吹かせるのさ

諦めたことも 忘れてしまうくらい
すべてに だんだん 慣れてくるだろう
むしろ その方が楽だったりするものだから
気持ちが全部移動したって仕方がないさ

慣れてしまってもいいだろう
ガチャガチャに混んがらがせて 複雑にしたところで
ぼくらを待っていてくれるのは 終わりだけなのだから
忘れてしまうか
いちばん いちばん 大切だった感覚を
あんなに バカみたいに 苦しんでいたこともね

ああ いつだって 自分で自分を持ち上げて
心に風を吹かせるのさ

気に入っていた存在は
やがて ぼくの心を喰い尽くし
もう 手遅れになったところで
ぼくはやっと気づくのさ
ああ どうなったって
最後は
自分で自分を持ち上げるしかないだろうと


こころ

残された まっ白の中に
ぼくは ぜんぶ 今までのこと思い出した
笑ってた やつら
生きていた 自分のこと
本当に今は どうしようかなって思っているんだ
隙間の感覚を拾い集めて
ぼくは ひとつのやり方を
今は見つけ出そうとしている
何がいちばん悲しいって
この心は もう1ミリも動かないのさ

きみは生きていて
いつか ぼくの胸に届いて
ここから一歩も動けないさ
どんな術も もうやりつくしたのさ
何が悲しいって
この心が もう どうにもならない

遠くまで 見渡した
とりあえず そうしてみた
そこにある 匂いを 吸いこんだ
今できるのは
そのくらいだった


何もかもが

こういうものさと 心の中でつぶやいて
涙がとまらなくても
何もかもが 何もかもが

きみは今でも笑うことがあるだろうか
楽しかったね
何もかもが 何もかもが

さよならと思うまえに ぼくらはいなくなった
耳鳴りが消えるように
何もかもが 何もかもが

あたたかい匂いが 夕暮れの中に浮かんで
ただ ただ それが好きだった
何もかもが 何もかもが

ぼくはうまくやれなかったけど
こういうものさと 心の中でつぶやいている
何もかもが 何もかもが


風を切っている

きみの住む街を
電車で通り過ぎた時もあった
時の流れに感覚が動かなくなった時
ぼくは まっさらな
漠然とした
記憶の風景を見るのだ

何度も声をかけようと思った
何度も笑ってみせようと思った
手を上げたその先には
いつも 泣きたくなるような
風が吹いていた

風景が流れていく
ぼくは風を切っている
今していることじゃないこと
何度もしようと思ったこと

きみの気持ちはわからない
きみがぼくの気持ちをわからないように
ただ 揺るがない心
きみの中にある
揺るがない心のように

流れていく風景の中に
きみの住む街があった
時の流れは
もう ぼくを 気にしてはいない
ぼくが夢を見ていると
思っているうちは


世界はきみの話をした

世界がぼくよりも もっと多くの
きみのことを話す時
ぼくは困ってしまう
どうしようもなくなる
かなしいような気がする
ぼくはその時 この世界で たったひとつ
どうにもできないことを知るんだ

ぼくは 何に沿って
何に 重なり
何と ひとつになり
生きているか 知っている

だから どうにもできない きみのこと
どうにかしたい きみのこと
一日のおわりにも 一日のはじまりにも
一日の途中にも
瞬間の中で
世界はきみの話をした

ぼくは 瞬間の中で
かなしいような気がした


10数えるうちに

ぼくの気持ちを挑発する ぼくがいて
あと10数えるうちに死んだ方がいい
そしたら 風の匂いが
この胸までやってくるだろう
ぼくが 唯一感じられる
この風の匂い
目を細めて
生きていたんだなあって思うのさ

ぼくの気持ちを挑発しているのは
ぼくだけさ
ほら 笑ったきみのカオが
こんなにも ぼくをラクにするんだ

ちゃんとわかっているんだけど
風の匂いが届く場所で
もう 死んだ方がいい
唯一感じられる この匂いの中で


まっ白な影

まっ白に見えていた きみの影を
追いかけて
疲れて
眠っている間に 過ぎていった
すべてのこと
そうだ 間違っていなかったよ
ほら 痛くて 痛くて
手を離してしまったけど
でも 大丈夫
きっと もう 思い出さないから

まっ白な きみの影
まぶしすぎて
眠っているみたい

何度も 何度も 同じうた
何度も 何度も うたう
屋上で リピートし続ける
きみの声 きみのうた

なんで 今 こんなこと
思い出したんだろう
だけど きっと
もう 二度と
思い出さないだろう

きみにも 思い出すことがあるかい
まっ白な まっ白な
生きている きみ

ぼくの中にも 外にもいる
どっちだっていいさ


夜のままがよかった

だんだんわかってきた
そして さあ どうしよう
おおげさなカオするなよ
夜のままがよかった
ただ その方が
まだマシだった

いろんなことがわかってきた
その上で やってんだ
おおげさにとらえるなよ
何でもなくないことが
何でもないことだ
夜のままがよかった
ただ それが
安心だった


一秒一秒

ぼくはなぜだか
ずっときみのことを思い出している
きみに会った時
きみはぼくの目を見たし
ぼくもきみの目を見た

あれから ずっと かなしいんだ
どうしようもなく
ただ かなしいんだ
何を見ても そこにきみがいた
どこにいても
きみがそこにいる気がした

ぼくのひそやかな感覚を
ぼくが知っている匂いを
ぼくの感じているすべての中に
ずっときみがいるんだ
ずっときみがいるんだな

こんなにどうしようもないことを
一秒一秒
ずっと感じている


夏の思い

目を閉じていたら
遠く遠くに 離れていく気がした
手をつながなくても
きみの体温が ぼくに伝わっていた
目を閉じて
心が白くなっていくのを感じていた

きみがまだ そこにいるような気がして
ぼくは 気づかれたいと思っていたんだ
ぼくからじゃなくて きみから
この空気をふるわせてほしかったんだ

空はまだ遠くまで見えて
この前も この次も
ぼくは くりかえしを感じている
夏が終わるまえに
ぼくは もう一度 きみに会えるだろうか

目を閉じて
しばらくの間
きみを描いている
目を閉じて ずっと
心が白くなっていくのを感じている


ぼくは今生きていて きみと一緒に眠っている

ぼくがじっとずっと黙って
家の中で そうしていた時
きみのうたが
頭の中
ずっと流れてた
同じ言葉のところ
くりかえし
ずっと流れてた
心の中まで
そうしてきた

ぼくが住んでいた家に
入り込んでいた光が
ぼくが歩いていた道に
充満していた匂いが

きみに染みついている
きみに染みついている
ぼくは どきどきしながら
きみに触れた
きみがぼくに触れたように

きみのまなざしが
ぼくを 動けなくして
ぼくを どこまでも運んでいく
きみの体温は
ぼくの知らなかった 温かさ
ぼくは どこまでも行けるし
どこまでも安心だ

外が騒がしくて
誰だかいろいろ話している
誰が誰に話しかけているんだろう
ぼくは何度か泣いたことを覚えている
ずっと昔の話
だけど 覚えている話

ぼくは今生きていて
きみと一緒に眠っている


多摩川を渡って

電車で多摩川を渡って
きみに許されていないことを思っていた
だけどぼくは もう あまり思い出せないんだ
勝手にずっとやっている
誰に嫌われようと
勝手にずっとやっている

いい時もあったと思う
きみと一緒に歩いていたこと 覚えている
日がゆっくり傾いていって
きみと同じものを見ていたこと 覚えている

だけど もう
何もできないんだ
突っ立ったまま
為す術がないんだ
記憶を辿ること
そこに気持ちを置くこと
それも もう できないんだ

電車の中で
多摩川を渡っていくのを見ている
目の前を通り過ぎていくのを 見ている


何も話してはくれない

何も話してくれなくても
ずっと遠くの空まで見える
立ち止まって
もう一度
だけど
やはり 何も話してはくれない
風の匂いだけ
きみを連れて
何も言わず 歩く

静かに閉じるきみの瞼を
そっと見つめていた
遠い静けさと風の匂いが
今 ここにやってくる
このままじゃ このままさ
そして きみは
何も話してはくれない

過ぎたぼくらの時を思い出し
ぼくはまた再び ひとりで居た時の時間を感じている
きみの困難は消えず
ぼくの感覚も消えない
ぼくらいつだって ひとりで なんとかしようと泳いでいく
時に隙間に入り込んでは ひっそり絶望する

きみを誘い また呼吸をしたい
削り取った時間がまた再び訪れるような
胸がちぎれてしまう時を過ごしたい
きみを誘い また ぼくは生きていたい

時が過ぎたことに 今気づく
ぼくはひとりで 新しい願いを抱く


すべては無意味で すべては愛おしい

瞬間を生きるなら
すべては無意味で
すべてが愛おしい
希望と絶望は 瞬間に存在して
見るものすべてが日常だ
一瞬のものであっても
繰り返し何度も そこにあっても
すべてが日常だ

ほら ぼくのカオは きみに似ている
きみのカオは ぼくに似ている
同じカオをする きみと出会った

ぼくはぼくを殺す時がやってくるだろう
すべては無意味で
すべては愛おしい


気力もないし 心も動かない

気力もないし 心も動かない
死ぬ時期も逃して
ぼくは もう為す術がない

まるくなって
眠くもないのに眠って
目が覚めたら
もう考えることができなかった

懐かしい匂いだけが
死ぬほど鮮明で
たまらなくて 動けなかった

長い長い夕暮れの道が
生暖かい空気の中に伸びている
よかったと思っていた時のこと
もう思い出せない
いや 思い出せたけど
すごく悲しかっただけだから

歩いて歩いて 息切らせて
自分の呼吸だけが
耳元にはりついて
どんな方法も 方向の違いだけだった

もう思い出せない
思い出したって しょうがない

長い長い夕暮れの道が
生暖かい空気の中に伸びていく
言葉にしなくても わかってほしかったって
勝手に思っていただけ


夜の匂いの中

いつも きみが待っている夜は
遠い匂いの中
いつまでもきみが こだわりつづける夜は
いつか ぼくの頬を過ぎた風
ぼくは 薬を飲み過ぎて
きみのこと 忘れてしまった
胸の中ばかり熱くて
この手はいつも 冷たいまま

窓がまっ白
ぼくらの呼吸のせい
いつまで ここで 生きているかな

ぼくが思い出す夜は
きみが いつまでも待っている感覚
ぼくがもう たどりつけない夜は
きみの胸を締めつける匂い
ぼくは 薬を飲み過ぎて
きみのことばかり思い出している
胸の中ばかり熱くて
この手はいつも 冷たいまま


うたう方がいいと思った

ぼくはうたいながら きみのことを考えていた
今ぼくはこうして 誰もうたなど聴いていない中
死ぬ気でうたっている
きみがここにいなくて
きみがここにいたなら
きみならどう言うか
ぼくにはわかる

ぼくはそんなことを思いながら
うたってた
目をつぶって
目をあけて
意味ないな
意味ないな
バカみたい
バカみたい
だけどうたう方がいいと思った
ここで 今
うたう方がいいと思った


東風

きみと この街にいるのが
なんだか不思議で
あたりまえのようにも思えた
東からの風が ぼくらの頬を走り
ぼくは その度
この街に住んでいた時のこと 思い出す
きみが吸っているタバコの匂いが
札幌の空気の中に 浮かんで
ぼくは なんだか とても懐かしい感じ
感じている
ああ そんな時 あったな
いつでも 思い出せる気もするし
もう二度と 思い出せないような気もする
湿った 雪空の空気
今 きみと居れてよかった


新しいうた

とても なつかしい気持ちになって
涙が出た
きみのカオ 見れなくなって
すごく 胸が痛かった
このまま 忘れてしまうのかな
それが いちばん こわかった

それでも何度も目が覚めて
何度も眠りについた

ぼくは 今 新しいうたをうたいたいと思っている
自分でやるよ 自分でやるよ
きみには どんなふうに見えている?
自分でやるよ
今 ぼくは 新しいうたがほしい

とても なつかしい気持ちになって
涙が出た
でも いいだろう?
ぼくは 今 新しいうたがうたえそうな気がしているんだ


この情けなさを最後に

ぼくは きみを忘れようとしている
意識して そうしようとしている
そしたら露骨に きみの夢ばかりみた
そんなはずはないのに
夢の中で
きみは笑っていた
そんなはずはないのに
夢の中で
ぼくらは笑っていた

ぼくは ひとつだけを手にし
それを すべてから独立させ
舵を切った
すべての中に きみはいた

だからもう 涙を流すのはやめろよ
だからもう すべてをめちゃくちゃにするのはやめろよ

これが最後の情けなさ
だから 見逃してやってくれないか
そして うたにしてくれないか
この情けなさを 最後に



夏のはじまりの匂い

あの夢のような きみと暮らした家の中で
聴いていた彼のうたを思い出す
窓から夏のはじまりの匂いがして
ぼくらは いつまでも酔っぱらって
彼のうたをうたっていた

生き急ぐ ぼくらは どこに辿り着けるのだろうか

そして今 この場所でも
あの時かいでいた 同じ夏のはじまりの匂いがして
窓からずっと 夏のはじまりの匂いが
わかるよ わかるよ きみのその感じ
そう言って きみが
目の前で 笑っているような気がする

ぼくらは いつまでも酔っぱらって
彼のうたをうたっていた
夏のはじまりの匂いをかいでいた



そんなふうにきみが 思っていてくれたらいいのに

眠っているのに
辛かった
何かあるんじゃないかと思って
ぼくはそこにいた
とまどっていた つまずいていた
自分の物音聞いて
たまらなく どうしようもなかった

忘れなきゃいけないわけじゃない
思い出しても しょうがないこと

びっこの足で走り回って
夢見ていたい

ほら ぼくはもう
きみに 何も 言わなくなって
そう きみが 気づいてくれたら
そんなふうに思ってくれたら いいのに

ほら ぼくはもう
こわくて 何も
きみに 何も 言えなくなってしまった
だけど せめて
そう きみが 気づいてくれたら
そんなふうにきみが
思っていてくれたら
いいのに



過ぎてしまった時

ああ ぼくは毎日
ぼくを殺したい
きみといた時も
ぼくは そんなふうに思っていたんだよ
きみは 今 どんな気持ちでいる
きみの悲しみと
ぼくの情けなさが
乾いた空に 形どられて
ぼくは なんだか
とても 懐かしい気持ちになるんだ
こんな気持ちになる時がくるなんてね
ぼくは ずっと 同じままでいる
きみの命が ぼくには救いだった
例えば ぼくが生きていることとして
救いだったさ 気がついたら
きみの知っていることに
心を通わせた
そうだ ぼくは
何もできなかったね
きみの言葉が 嫌でも届く夜は
本当にぼくは 何もできなかったよ
毎日 ぼくは ぼくを殺したいんだ
ああ 本当に
好きなものは 本当に大好きだった
ぼくは 空気の中に とても本当に
そこにいたよ
思い出すのは 同じ景色ばかり
こんなにも静かな 本当の時が思い出される



手紙

久しぶりに きみから手紙をもらった
きみの きみにしかわからない
きみの気持ちが
こぼしているのを かまわないように 書かれてあった
何ってことではない
書いているきみも
読んでいるぼくも
そんなふうに
言葉があっちからこっちへ
こっちからあっちへ
投げられ 受け止められる

いつからか ぼくらは
死ぬまでに あと何回
きみに会えるのだろうかと
時々 思うようになった
距離の中で ぼくらはお互いのことを
時々 思い出す
きみもぼくも 変わったのか 変わっていないのか わからない
ぼくらは わからないまま 生きている
わかったように思う時もある

きみにしかわからない 気持ち
ぼくにしかわからない 気持ち
そんな気持ちが 言葉になって 勝手に交わされる時
きみとぼくにはわかる気持ちのように
思えてくる
時々 そんなことを つよく思って
ぼくらは 生きている


考えている

家を出る前に
きみの言葉 思い出した
それでいいって
そう言える
きみの心が羨ましかった

河川敷で
夏草の匂いが
充満して
ぼくは
きみにとって
ぼくの何がだめなのか
考えている

きみのあきらめと
きみの辛さと
きみのやさしさが
あたりまえにあったこと
ぼくは気づかなかった
ぼくは情けないやつだな

知っている匂いを嗅いで
見覚えのある 空の広さを仰いで
夕闇の訪れを迎えて
ぼくは
きみにとって
ぼくの何がだめなのか
考えている



もう少し

中には いいうたもあったよ
きみの たった一言が
ぼくの過去を呼び起こすこともある
寝床に就く安心感を
ぼくはひっそり 持ち続けているだけ

きみが立ち尽くす
風景の中に
ぼくの感覚が 漂っている
それだけで ぼくは
きみを愛してしまえるんだ

風がいつも
ぼくを はっとさせてくれるなら
ぼくは 今まで生きていたことを忘れない
ぼくらはそんなに 離れてはいない
ぼくらはそんなに 違ってはいない
ただ ぼくらはすぐに悲しくなって
もうだめだって 思うだけ

屋根の上は光っていた
熱を持ったトタンに触れた

きみの言葉に笑えたら
気持ちがもう少し 放たれたなら

終わりの匂いをかいで
しばらくの間
何を思っていたのか



きみは変わってしまった

きみは変わってしまった
ぼくの言葉は もう届かない
おまえは変わったねと
きみは心の中で思っているのだろう

きみは変わってしまった
ずっとぼくの味方だったのに
おまえの一言で
おまえはおまえを だめにしているのだよ

きみは変わってしまった
きみだけが ぼくをわかっていたのに
おまえが何を言っても
俺は何も変わってないよ

きみは変わってしまった
ぼくらの世界から きみは消えた
おまえは どうして そんなに
すべてを めちゃくちゃに 傷つけるの?

きみは変わってしまった
ぼくの言葉は もう届かない
おまえは変わったねと
きみは心の中で思っているのだろう



冷たい手

情けない言葉ばかり
出てきてしまうから
何も書きとめないようにって
そんなこと思っている
冷たい空気に
呼吸が浮かび上がってる
小さな明かりの中で ぼくといる
切り裂くような
そんなような
きみが好きだった
冷たく白い手で
うたっていた



愛をこめて

ぼくは耳の奥で
生きる気力が湧いていた
ひっそりと夜の中を
その気力を胸に抱き
歩いて帰った

すぐに ぼくは
彼に伝えた
本当に助かったよ
久しぶりの彼は
とても調子が悪そうだった
その中で 精一杯の
返事をくれた
愛しています

そして 今夜
ぼくは もう一度
眠ることができる



いつの間にか

きみはいつの間にか
ぼくのうたをうたわなくなって
ずっとぼくが思っていた
きみのぼくへの思いは
いつの間にかね
いつの間にかね
そんなことはきみは
体のはしっこで笑って
何でもないと言うんだろう
ぼくは いつまでも
きみに追いつけない
ぼくは いつまでも
きみを追いかけている
そんなことは 何でもないと
きみは笑うんだろう
いつまでも ぼくの思うことは
どこにも行けない
きみのやさしさは
ぼくを安心させたよ
あたりまえに 本当だったよ
いつの間にか
きみのうたの中から ぼくは消えて
きみは いつまでも 何でもないよって
笑っている



終わり

これが最後だと思いながら
過ごすのは辛いだけだ
突然に終わってしまう方がいい
突然になくなってしまう方がいい
いつのまにか過ぎてしまって
いつのまにか変わってしまって
そうなってみて 気づいて
悲しむ方がいい
後悔する方がいい

ひとりきりで水の流れを見ていた
ひとりきりで夜の匂いをかいでいた
目の前にも 心の中にも 誰もいなくて
とても本当だった
ぼくはやっと自分を取り戻したんだ



ぼくの友達

いつから ぼくは 楽しむことを
覚えたんだっけ
いつから ぼくは
ぼくを 忘れてしまったんだっけ
ぼくの友達
きみのうたを思い出している
ぼくの友達
きみはぼくをやさしいと言った
いつから ぼくは
きみを嫌な思いにさせていたんだっけ
いつから ぼくは
ぼくを知ってしまったんだっけ
ぼくの友達
きみの声を思い出している
ぼくの友達
きみはぼくをわかっていると言った



涙が胸を伝っていく

空のずっと奥
遠い昔も それを見た
きみがぼくをわかっているように
ぼくもきみをわかっている
二人の足元が 夏草にぬれる

目まぐるしく 始まりつづけること
いつの間にか 過ぎてしまった時
こんな気持ちを どうやってきみに伝えよう
ぼくが泣いているのは
ただ それだけのことだよ

ふるえる胸が 今にもきみに届きそうで
また ぼくは そう願っている
見上げると いつも この胸はこわれてしまいそうで
そう ぼくは 覚えているんだよ
いつだって
同じ涙が 胸を伝っていく

 

 

最後の言葉

きみはもう最後の言葉を
ぼくに くれたのかもしれない
ぼくは ほんとうは 何も 持っていない
大事に大事に
きみがぼくに触れる

もう 何もなくなった景色を
ぼくは 今 ここで 見ている
知っている風が吹いたような気がする
また きみを 思い出しているよ

きみに最後の言葉をもらって
ぼくは ほんとうに 幸せだよ
いつのまにか 帰る場所がなくなっても
大事に大事に
きみが 今 ぼくに触れる

 

 

夕暮れの時

本来 夕方って
どんな時だっけ
木のてっぺんが 雨に揺れて
ぼくは 何を思い出す

きみが静かな時を ぼくに与えてくれるなら
ぼくは迷わず きみに身を委ねよう
ぼくはきみへの思いをうたにして
いつまでも ばかみたいにうたっている

かつて ぼくが過ごした夕暮れの時
本来 ぼくが安心した時って一体 何だったっけ
きみが ぼくに 与えるすべて
ぼくは 何も思い出せない
きみが望むとおりに
ぼくはすべてを委ねよう 

 

 

愛おしさ

きみが ぼくの側に居たら
ぼくは もっとうまくやっていけるのだろうか
ぼくが きみの側に居たら
きみは もっとうまくやっていけるのだろうか
例えば こんな時
寒い冬の朝に そんなことばかり考えている

愛おしさ

薄曇りの中に太陽の光が やわらかく
ほんとうに 好きなんだ

ごまかすための つよがりと
泣きたくなるような 今と昔
大事なことを 忘れてしまいそうさ

ずっと ひとりで 歩いて
ずっと ひとりで 待っている 

 

 

さみしい朝

ある程度出せばとまる咳
今日より明日はきっといいはず
そう いつも 期待してしまうから
きみに会えない日々がつづく
ずっとずっと昔の 日曜日の午後 思い出す

曲がった体のまま眠って
昨日をずっとひきずったまま
今日より明日はマシになって
そんな夢みたいな頼りない愛情
きみのことをずっと考えている
あたたかい夜の空気 思い出す

 

 

千代

ぼくは勝手に想像して
きみのこと 勝手に想像して
きみが呼吸していることを 想像してる

きみが ぼくの目の前からいなくなっちゃったから
きみは ずっと ぼくの中にいる

想像するなんて あたりまえだろ
勝手に 想像するしかないだろ
きみが 苦しくないように

ぼくの目の前から 突然いなくなっちゃった きみ
だから もう きみは ぼくの中にいるよ

ぼくは ずっと ずっと 想像している きみを

 

 

春のはじまり

ひとつ ひとつ 言葉をたどっていって
ぼくなら そういうふうにやる
ぼくは そうやってやってきた
雨の匂い 春のはじまりの湿った匂い

ああ まだ ぼくは 生きていた

久しぶりの感覚を 今 感じている

ああ まだ ぼくは 生きている

 

 

想像と夕暮れ

いつだって ぼくは 見れなかったものばかり
想像するちからがつよすぎて
心を今ここに置くことができない
頭の中はいつも忙しいけれど
心の中はいつも空っぽだ

冷たい 夕暮れの風が吹く
ひとりきりのぼくの頬をうつ
きみがくれた やさしさ 思い出す

いつのまにか 頭の中で
ぼく ひとりの おしゃべりがはじまって
こんなに いい天気なのに
こんな気持ちでいるのが むなしい

過ぎた季節の匂いが 胸をつよくしめつけている

冷たい 夕暮れの風が吹く
ひとりきりのぼくの頬をうつ
きみがくれた やさしさ 思い出す

 

 

胸の中で、夜空で

涼しい部屋の中で
もう一度 ひとりになった
いつのまにか すべてが 胸の中で光っている
ぼくはどんなふうに きみと話していたっけ
ずっとわかっていたつもりだったけど
もう 思い出せないみたい
なんだか ほら
とっても せつなくなる
ぼくが 見てきた すべて
きみが 見てきた すべて
それが ただ
夜空で 静かに 息をしている

 

 

旅への思い

ぼくらの靴の下に 同じ葉っぱが
ぼくらの足跡の上に 同じ花びらが
同じ道を歩いたからさ
同じ道を歩いていたからだね
どこまでも 青い空を求めて
明日には また それぞれの日常へ
ぼくらの歩いた道に 同じ木の葉
ぼくらが同じ時を過ごした記憶
ぼくが触れるこの木のように
きみが触れるこの木のように
ぼくらの思いも さりげなく
ずっとここにある
遠い昔から 遠い先まで
ぼくらは儚さを知るだろう
忘れた感覚は
ほのかな さみしさになるだろう
それでぼくらは続けていくのさ
はじまりのような ときめきと
おわりのような 静けさの中
静かに消えていく感覚の中

 

 

郷愁

まだ ぼくが そんなに始まっていないことを
ぼくが 知らなかっただけ
だから こんなに愛おしいんだ
空気は青く澄みきっていて
涼しさだけがそこにあった
何か大きなものが側にあったような
そんな錯覚のような 愛おしい日々さ
ぼくはあまりにも知らなくて
到達しているような気がしていた
空気は青く澄みきっていて
涼しさだけがそこにあった
この目にはっきりと見えていたものは
あまりにも青すぎて
だから こんなにも愛おしく
錯覚のような日々さ

 

 

ぼくは変わってきたらしい

細かく素敵なことも 覚えていられないくらい
何度もきみに会う
くりかえし 新しいきみが ぼくの中へと入ってくる
あの5月も もう今じゃ 夢の中
ぼくは変わってきたらしい

今日は何で確かめよう
口も手も足もあって
でも きっとそれは 匂いの中

小舟が水際で揺れている
触れている音がする
ここにいるのも
ずっと うわの空で

ぼくの中へと入ってくる
また5月がやってくる
夢の中か うわの空
ぼくは変わってきたらしい

 

 

夜の海

まっ暗い海を見つめて
きみが話しかけてくれるのを待っている
いや ほんとうは
このまま 2人で黙ったまま
何も起こらなきゃいいと思っている
ああ 私は疲れて眠りたい
それがほんとうな気がしている
何もしない 何もしない
日々が続いている
まっ暗い海の向こうに光が見えて
あれは何かと 心のよりどころになって
私は必死ではない
とても自由な生活と心で
私は生きている
海の向こうの光が
船だったらいいなと思う

 

 

夏の夜の友達

遠く きみのうたが聞こえて
ぼくは走り出した
よく知ったきみの姿を 目の前にして
ぼくは 立ちつくしていた
その時はじめて
きみが いなくなったことを
さみしいと思った

夏草の匂いと 生ぬるさの中の涙
胸が痛くて 胸が痛くて
ぼくら そんな夜を
ずっとずっと くりかえしていく

ぼくらが目指した世界
ひとりきりで居ること

ぼくらはいつも外に居た
外でいろいろな話をした
記憶は声として残っている
きみの声は
まるで外の空気だ

夏草の匂いと 生ぬるさの中の涙
胸が痛くて 胸が痛くて
ぼくら そんな夜を
ずっとずっと くりかえしていく

 

 

ぼくは泣いている

眠る前に
みんながぼくを呼ぶ声が
聞こえたんだ
風にのって 声が届くような気がした
やさしさが死んで
ぼくは泣いている
耳元に
みんなの声が 聞こえたような気がする
届くと思って ぼくはうたったんだ
ぼくは泣いている
風にのって
声が届くような気がした

 

 

夢の中の春

どうやったら きみに好かれるか
汚く小さく
頭と胸が苦しくて
いつだって 夢の中の春
ぼくは 十年とちょっと
風に吹かれ
風を吸いこみ
ああ 大好きで大好きで仕方がない
ぼくのやり方を
きみに見つけられて
ぼくは 泣きたくなる匂いを思い出す

目に染み込んだ夕日が
涙を押し出した
きみに会いたいのと同じくらい
自分が愛おしくて
空の色を180度見つめ続けていた
青色も赤色も 本当に好きさ
きみの声の奥
ぼくの知っている きみの歌声に気づく

ただ ただ
ずっと このまま
高まる気持ちが はじける
寸前のところで
ずっと このまま

 

 

その先の向こう

もしもぼくが余裕を手に入れたら
きみとの世界を
もっと愛おしく思うだろう
でも これは想像の話
その時になってみないと
すべてのことはわからない

ぼくらが目指しているのは
持続し変化し続けていくこと
その先の 向こうの向こうの向こう
夢の世界のことを 言っているわけじゃない

まだらになった気持ちを
いつかまた きれいにまとめて
外へ出よう
やあ、と大きく手を振ろう
夜から朝へと
確かな空気を ぼくら感じている

素敵なことだ
持続し変化し続けていくこと
確かな空気だ
その先の 向こうの向こうの向こうへ

 

 

風景

目に見えるものだけが すべてじゃないけれど
ぼくは
目の前の風景を信じたい
想像する力で
ぼくは
目に見えるものも信じていたい

遠くへ行ってしまった友達は
ぼくの方なのか
それとも
思い出をくりかえすだけなのは かなしい
ような気がする時がある
だけど 思い出す
ぼくらの過ごした季節を
夕暮れだけが 深く深く
心をほりさげて
風景は たったひとつだけじゃない
だけど 追い求める感覚は
たったひとつ
はっきりと
たったひとつだけ
たどっていく たどっていく
愛おしくて 涙がでるのさ

 

 

素敵な世界

のっぺりとした月夜を
ぼくは 今 ひとりで歩いている
こんなにも なんでもない気持ちが
ずっと続けばいいのに
アタマからすっぽりと 湿り気に包まれて
ぼくは 今 川の側
死んでしまいたいのと
ずっと生きていたいのとで
胸がいっぱいになる
空と地面とをつなぐ ぼくの気持ち
好きだった人の言葉を思い出す
のんきなもので 余裕なもので
あまりにも素敵な世界だから

暮れきらない夕空のあと
ちゃんと夜はやってきた
これ以外に何があるの?
いろんなこと 思い出しちゃうんだ
いろんなことに 期待しちゃうんだ
白ぼけた月
アタマからつまさきまで 今 じっとりと感じている
のんきなもので 余裕なもので
あまりにも素敵な世界だから

 

 

夕焼けを追いかける

夕焼けを追いかける
ずっと空がひらけている
きみの白いカオが夕闇に浮かぶ
半分夜になって
風の中にいる
すべてが黒いシルエットになって
雲の切れ間が金色に光る
きみはぼくに
何を考えているの?と聞く
ぼくはきみのことではないと言う

大事なことを ぼくはいつ言おう
ぜんぶが夜になるまで
ここにいる 動かずに
匂いがかすめて 心をさらっていく
それぞれが それぞれの場所で
それぞれなことを 考えている

 

 

夕方の匂い

季節が変わって
チャイムの時間も変わった
夕方の匂いが この部屋に充満し
ぼくらは寝ころがったまま
ずっと話しをしている

遠く昔のことを思い出すか
きみの目の奥に
ぼくが映るか

薄暗い部屋の中に 夕方の匂い
静かにぼくらの声が響き渡る
四角い小さな窓だけが 外とつながっている
ぼくらは寝ころがったまま
いつまでも起きている

愛おしい 遠く昔のこと
きみはそんな空気をまとっている

一歩ずつ夜を連れてくる夕方
今 この部屋の中だけに
ぼくらはぽっかり浮かんでいる

遠く昔のことだろう
思い出すのはいつも
遠く昔のことだろう

 

 

きみの知っていることだけが
すべてだって思うのかい
ぼくの知っていることだけが
ぼくのすべてだ

きみの細い ひとつひとつのやり方を
光の中たどっていた
まぶしくて
何も見えなくなるような気がしている

きみの知らないことだってあるさ
たくさん ほんとうに たくさん

きみの知っていることだけ
ぼくの知っていることだけ

きみが言うすべては
それくらいのことなんだぜ

 

 

ぼくらの情熱 、ぼくらの愛

彼にどんな手紙を書いたのか
ぼくらお互い知らない

生き急ぐような 素敵な彼の情熱を
ぼくは立ちつくし 見つめている

思いは届けど
ぼくは
空っぽのままだ

もう会えなくても かまわないと
眠る前に 布団の中で思った
首を振った 首を振った
ただ こんなにも さみしい

愛は交わされ 風は吹く
ぼくは しかめっつらのまま
終わることと 続くことを
願う

 

 

今と昔

歩くように音が始まると
今のきみなのか 昔のきみなのか
ぼくにはわからない

とどまることなく 音はつづいていく
今のきみも 昔のきみも
ぼくを見て 笑うだろう

お互いに歩み寄れるように 努力した
激しく言葉をさえぎって
この感覚を守ろうとした
みんな同じものを欲しがっている

きみが気づいてほしいのなら
ぼくのことにも気づいてよ
始まったまま 終わらない音
今も昔も
ぼくには愛おしすぎる

ぼくらいつのまにか すべてを
手に入れてしまっているということ
ぼくら
大人にも子供にもなれないだろう

お互いまた一瞬一瞬を忘れて 歩いて行けるだろう
始まったまま 終わらない音
今のきみなのか 昔のきみなのか
ぼくにはわからない

 

 

風はいつ吹いてくるのだろう

いちばん好きなうたは 中学生の真っ昼間
どうでもいいことにこだわる わりきれない気持ち
こっけいで ありふれていると
ぼくは思っている
土の匂いを舞い上げて
風はいつ吹いてくるのだろうか
この 親しく慣れた気持ち
いつまでも こだわっている
ぼくは
忘れられない
風はいつ吹いてくるのだろう
遠く夢の中まで 届くように

 

 


こんな気持ちは あまりにもみじめだから
今はこうして ひとりでいよう
月が冷たく窓に滴を垂らして
夜がいつまでもつづくように
ぼくは祈っている
きみはどんなふうに ここまでやってきたの?
あの頃を思い出す時は
どんな気持ちで 過ごしてきたの?
もう 何も好きじゃなくても
変わっていくものを 受け入れられなかったとしても
ひとりで安心できる夜を待っている
冷たい頬に滴を垂らし
いつだって 夜だけが味方なんだ

 

 

気持ちはめぐる

ぼくもそう
きみと二度旅に出たんだ
それよりも もっと
日々はめまぐるしかった
いつまでも この灰色の空の行方を
思っていたかったんだな
きっとぼくら

朝も昼も夜も おはようって言って
夕方と朝方をとりかえては またもとどおりにした
きみの涙を何度も知ったはず
埃くさい物の中で
遠い遠い場所を見つめていたはず

このぎりぎりの一本の線の上を
イライラと でも何でもない気持ちで歩いていた

ぼくらの匂いをのせて 風はいつまでも吹いてくれる
めぐりめぐった気持ちに ぼくら気づけるかな
ぼくもそう きみもそう

 

 

涙の川

行き場のない懐かしさを抱き
行進して行く時
きっとぼくはきみのうたを思い出すだろう
きみに教わった花の名前が
涼しく静かな月夜に浮かぶ
月の輪郭を形どってゆっくりたどっていく
ぼくは自分の感覚だけ信じる
風もなく
行き先を変えるどころか
決まってすらいないんだから
すべてはこのうたの中に詰まっていて
本当にそうなんだって思うだけ
涙の川が流れているだけ
過ごした季節を思い出す
きみの目の閉じ方を思い出す
無邪気なぼくらの足跡が
いつまでもそこに残っているように
ぼくの時間が流れているのと同じように
きみの時間も流れているんだね
ぼくはつづけていく
涙の川でぼくはこの感覚を信じている

 

 

15才

空気の部屋に再び閉じこもり
思い出せる限りのことを思い出す
沈み込んで浮かんでいたい夜と
ぼくらが待つ朝方

耳の中で心を陶酔させて
痛みはもう充分
そんな気持ちもなきにしもあらず
窓の外ずっと見ていたの
体勢は低くにじみよる
逃げていたのは こちら側で
追っていたのは そちら側で
焼却炉の煙突も
まあまあ空に突きささり
前なんか見ていない 後ろの気配には
いつだって神経が高ぶる
誰がこんな気持ちにさせたの?
たぶんそれはぼくのせい

いつも晴れていた空は
不安も不満も硬くなったカオも
ぜんぶ形どっていた
バカもぶっとんだ精神も
背たけそろえて閉じ込められた
ぼくはただ らせん階段のてっぺん目指す
夕方をつかまえて夜を呼び出す
はやくはやく ぼくの姿を見えなくしてくれ
10年前のきみたちに憧れて
10年後のぼくたちは苦労している
せめて月夜を3分の2
純粋な目玉を2つずつ

手に入れられる時間は案外長いよ
川の流れも雨の日々もぼくのもの
サイゴのサインを飛び越えて
その先へ行く
もどることも進むことも
とても素晴らしい
ゆっくりとひとつずつも 唐突にあせる気持ちも
とても素晴らしい

 

 

多摩川サンセット

きみまかせで歩く朝
声にまかせてぼくはうたう
この恋にまかせて
期待だらけの日々は行く

その目の中に入り込むすべを
ぼくは知る
そんなにつよくはない
だけど
まだここに居たいね

座りこんで目を開けば
灰色の空が裂けていく

この街でいつまでも
ささやかな秘密を守っていく
めぐりめぐって
まだきみだけがここにいる
くだらなすぎて言葉にできないことで
いつまでも じだんだふんで笑っている

 

 

ひそやかな感覚

頬を押しつけて眠る
安心できるように そうしてみたが
横顔はまだ耳をそばだてている
もしこの町に雪が積もるのなら
どんなによかっただろう

誰もが眠っている
そう思うと 安心して歩いて行けた
闇は匂いを濃くして 静けさを閉じこめる
そんなつもりはないのに
時はいつのまにか
どんどん どんどん 進んでいたのだな

この気持ちを人のせいにして
ずっと子供のままでいよう
何も知らないと言ってやればいいのだ
ぼくは死ぬまで
しっかりなんてできないだろう

地平線に近い空が
一瞬 白く明るくなって
雨と風がすばやく空に吸い込まれていく
思い出す あの丘の上に
また 立つことができるだろうか

光る空の隙間に
滴を垂らすものは
ぼくがいつも夢見る
ひそやかな感覚につづいている

 

 

まっ暗い部屋で

大事なこと
きみとは何も
話し合えていないような気がしている
でも
きみとは話し合うなんてことは
しなくてもいいような気がする
ただ
きみのカオをずっと覚えていたい
きみの匂いをずっと覚えていたい
側に居れなくても
ずっと続けていて
ぼくもずっとこんなふうに
続けていくから
まっ暗い部屋で
手さぐりで
言葉をつかもうとしている
言葉で感覚を
つかもうとしている

 

 

河川敷にて

石ひとかけらにもなれないで
誰の心も 動かすこともできないよ
目に映る確かな風景にも
問いかけ
ひとつの後悔を胸に抱いている

夕暮れは大きくたれこみ
なびく風に匂いを求める

ひとつふたつ足場を移し
この川を渡って行けば
昼も夜も移り気な気持ちも
思い願ったとおりに 入り込んできてくれるだろう

夕暮れは大きくたれこみ
なびく風に匂いを求める

 

 

道の灯

そっと慎重に匂いを吸い込んで
道に電灯がついて
この感覚が生きているうちは
朝方と夕方が双子みたいに
ぼくの目の前で笑っている

今日も明日も会えない
きみの目は ぼくの目を見ることなく
空っぽの家路を行く

ほら こんなに簡単なのに
ずいぶん長い時間をかけたものだ
悔やむ時の流れはどのくらい?
日が落ちて 夜が
ぼくを抱きしめてくれる

消える電灯たどって歩こうか
きみはぼくを想ってくれるかな
今日も明日も会えない
いちばん乗りの道を行く

 

 

湿り気のある夜

ぼくは夜を通り過ぎて
匂いにも気づかない
ぽたっと空が重みを含んで
ぼくをいつまでも待っているのに

きみに会いたい
ぼくらの街の匂いをかぎたい
いつまでも ぼくは
何度も同じこと思い出す
ただ ほんとうに ちゃんと
過ぎていくものなんだなと思った

ぼくは自分の呼吸に気づく
ぼくの息づかいが
ぼくの耳に届いてくる

湿り気のある夜が
ぼくをいつまでも包み込んでくれるのに
空の水分が ぜんぶ降りた夜は
きみに会いたい
ぼくらの街の匂いがするから

 

 

きみと出かけて
いつまでも砂じしゃくをさがしている
日が暮れて
ぼくらはどこへでも行けるよ
誰かがぼくらをさがしに来ても
影にもなれない ぼくらを見つけることはできないよ

生あたたかい風が 地面を這って吹いてくる
雪の間を通り抜けて
それがぼくらの頬には冷たく感じる
川に沈む夕日は いつだって
ぼくら 味方だと思っているから

誰かがぼくらをさがしに来ても
闇にまぎれた ぼくらを見つけることはできないよ
闇になった ぼくらを見つけることはできないよ

 

 

青色の旅人

本当の気持ちで
うまくやっていけますように
ぼくは信じるものを
必ずいちばんはじめに持ってくるよ
そこに現実を存在させるよ
きみがいることで 安心できる夜は
ほんとうに たすかるよ

青い山が 目の前に広がる
ぼくは 青色の旅人かな
深い深い沼に 足を浸してみる
キラッと光が反射して
生ぬるさが 体に染み入ってくる
ぼくは もがきながらも
ぼうっとしてしまう
それは 途方に暮れているということなのかな
目の前に広がる景色が ただ
ぼくに 思い出を残し続ける
そんな時 ちょっときみのことでも想ってみると
空が いつの間にか 赤く染まっていた

はやくも 次の季節を 待つことにしようか
ああ、今日もまた、と
シガナイ ぼくの情緒だよ

 

 

初秋

猫は規則正しく背伸びして
自分のちょうどいい体のやわらかさを
保っているみたい

いつだって会えるとは 思わない方がいい
会いたいと思う人とは
すぐに簡単に会えなくなってしまうだろう

思ったことはきっとすべて正しい
夢の中にまできみが現われる夜
ぼくは何度も目を覚ましては また
新しいきみに出会う

カーテンの向こうで 雲の切れた空が笑う

 

 

ぼくは旅に出たいと思っている

昼が土を温める匂いと
夜が木々を冷やす匂い
ぼくは今 窓辺から見える景色を
目の中に溜めていっている
どうしても心が窮屈に
ここにとどまろうとしているから
ぼくは心の旅にすら
出ることが出来ないでいる
緑は ただただ 濃く
海は光に満ちている
風がすべてをかきまわしても
ぼくはまだ終わりを意識している

きみの言葉と表情と温もりを
思い出せる位置にぼくはまだいる
温められたものが冷やされていく
その中で
目の前に見える景色
緑は ただただ 濃く
海は光に満ちている
終わりを意識したままでも
ぼくは旅に出たいと思っている

 

 

少年

ぼくはまたきみに
嫌な思いをさせてしまったような気がしている
それでもまだきみは
ぼくをその目の奥の底へ底へと
沈ませてくれるのかい?
ほんとうにやさしいね きみは
ぼくは泣きそうで泣けないでいる

遠く左側に山が見えるから
ぼくらの進行方向は右だ
偶然にもぼくらは夜の中
必然にもぼくらは月の下

ずっときみを連れ出したかった
ずっときみの側で眠りたかった
海の深さが空にのぼって
ただ この素晴らしいものを
きみと一緒に見たいだけなんだ
いつも いつも

何も言えなくても
どこにも行けなくても

 

 

ちゃんとつながっている

目まぐるしく
それぞれがスピードを持って
走っているけれど
そこでは ちゃんとつながっているよ
ぼくのアタマの中に ひとかけらも
みじんも そのことがない時は
毎日のことのようなものだけど
ちゃんとそこで いつもつながっているんだな

まっ黒く空がアタマの上に広がって
ずっとずっと遠くを思ったりする
あたたかいものに あたたかいものが触れて
ぼくはもうほんとに幸せだよ
余計なことは口にしないで
ちゃんとそこでつながっているから

空がほんとに黒く黒く広い
触れていたものが離れて
あっちとそっちへ それぞれに歩いて行って
またそれぞれに それぞれを忘れても
そこではいつも ちゃんとつながっている

目をひんむいて 筋張って
思い出さなくてもいい
いつだって 気づける
だって
そこではいつも ちゃんとつながっている

 

 

窓の外

いつも 窓の外がある
むずかしいカオをしている時も
きみに夢中な時も
きらきらした目の中で お互いを映しあう
もっと近づきたい
なにを話していても
ぼくの気持ちはそれだけ
そうして 窓の外は
そんな時も そこにある
小さなぼくときみが プールで泳いでいる
アタマのてっぺんに 光を浴びながら
窓の外 窓の外
ぼくにいつも
ちゃんとひとりだってことを
おしえてくれる

 

 

水たまりの中に希望が揺れている

水たまりを見つめて
ぼくは愛おしさを思い出している
いつのまにか
大丈夫になっていた気持ちの中に
空が揺れている
もう 随分
いろんなことが過ぎていった

ぼくのアタマをあたためつづけた熱と
大きく肺に吸い込んだ風が
ぼくに呼吸をさせている
足下で水が蒸発している
その中から春の匂いがしてくる

壁に映った影で 自分の髪型を見る
坂道を下りてくる自転車の人
風を切って気持ち良さそう

ゆっくりとその季節を思い出す
同じ長さに腕を伸ばして

 

 

娯楽

どんなに苦しくたって
ぼくの娯楽の時代はおわりだよ
古い匂い あっちの建物の匂い
ぼくらは鍵をこわしたいだけ

肩まで浸かって
鼻を覆って目の下まで

どんなに苦しくたって
頭のてっぺんに届くまで浸かるんだよ
きみは もう 手ぶら
ひとりになれる夜だって遠くはない

そして塞ぎたい
鍵をこわしたあとは
気づかれる前に
足の線にぼくは おかしくなってる

異国を用意して
ぼくらに どれかひとつくらいは
いいじゃないか

 

 

遠い川の朝

ぼくはもっとはやく きみのもとへ行きたかったけど
今のぼくからきみへの道のりは 少し長くあった
青白い まだ朝になりきらない川の側で
きみは ぼくを待っているだろう
きみの顔がはやく見たい
きみの目が ぼくの目を見る
あの たまらなく幸福な瞬間を
ぼくの白い息が空に上った
素晴らしい冷えた空気が体を包む
きみの白い肌を 風が撫でている
コートとマフラーを身にまとい
ぼくらはまた 出会い笑いあう
朝の匂いの中に煙草を吹かし
ふたつの匂いを同時に吸いこんだ

路地裏でぼくは夢を見ていた
うまく動かない体が腹立たしく
力を持て余した
見た夢は 決して形になって現れないような気がした

いつか消えることなんて
考えたことはない
きみへの道を ぼくは何度も往復する
遠い川の朝を
きみの目が ぼくの目を見る
あの たまらなく幸福な瞬間を

 

 

夜風はぼくらをやわらかくしてくれる

猫の目にキラリと光るのは
今 ぼくが見ている月と同じ
小さな体が動いているのは
重ならない ぼくの呼吸と同じ
群青色に染め上がる空
きみが 次々と星を見つけるだろう
ぼくは すべてを絵に画いていこう

夜風がこっちに向かって走ってくる
足がしっかり地面についたなら
プラネタリウムの屋上へ行こう
夜風は ぼくらの硬くなったカオを
やわらかくしてくれるよ
プラネタリウムの屋上へ行こう
差し伸ばす手も きっと届くだろう

白い形を 瞼の裏に残して
ユーレイが走っていく とても速く
振り返れば きっとぼくらも
ちゃんと白い形を残している
夜に浮かび上がる 白い形達になる

夜風がこっちに向かって走ってくる
足がしっかり地面についたなら
プラネタリウムの屋上へ行こう
夜風は ぼくらの硬くなったカオを
やわらかくしてくれるよ
プラネタリウムの屋上へ行こう
差し伸ばす手も きっと届くだろう

 

 

きみの星のカオを見送って

ああ ぼくはここで
何も言わずにいるのも
本当だと思ったし
きみの星のカオを見送って
ぼくはぼくで また動き出す

風だけが 雲の動きを知らせて
空に虹を映す

涼しく慣れた匂いだった
ぼくは どこまでも走っていった

惑わされずに
どこへでも行けたら
ぼくはきみのことを
忘れないだろう

まるくなったお腹に手をあてて
きみの呼吸を確かめた
何度も温かさにカオをあてた
きみの名前をつけたのは ぼくだった

長い間 ぼくはきみに関わってきたし
夜汽車の中で きみの夢を見たこともあった
広い広い公園で
冬がそこまでやってきていることを感じ
家に帰る喜びを 抱きながら歩いた

ずっとずっと 平気なカオしていたかったから
長く辛いだけでも ぼくはこの方がいい

 

 

青色

ぼくが寸足らずなら
きみも寸足らずさ
ぼくがこれだけなら
きみもそれだけさ
泣いたりしたら
びっくりされるだろうか
でも 大丈夫 充分楽しんでいるから
それに今日はついているし

ぼくの景色に薄モヤが
かかっていようが
かかっていまいが
きみには見えない
もうずっと長い間 上を見続けていたから
目の中は青色だけ

 



遠い終わり、もとどおりの一日

ぼくは今 道端にいる
ここからは ずっと遠くの道までよく見えて
きれいなライトの列が
遠くまで規則正しく並んでいる
夜がすっきりと景色を包んでいる
鼻先に触れている匂いは
まだ ぼくが覚えている部分
踏み出す 一歩一歩が
鮮明にぼくの興奮を浮かび上がらせる
ぼくは今はまだ遠い終わりに 安心している
興奮と豊かさを同時に手に入れて
ぼくは 本当によかったと思っている
ずっとずっといつもより たくさん歩ける気がする
体の内側を掴んで
その手を夜空に突き上げれば
ぼくは今日も うまくやったと思うよ
知っている道は いつもやさしくて
いいことばかり思い出す

まっ白な太陽は ぼくの目線の高さと同じ
この冷たさが終われば 一日はまたもとどおり
吐いた息の分だけ ぼくは胸にうたをためていく

苦しく愛おしかったから
もう二度とおとずれなくて
何度も思い出す
いつもぼくを追っていたものを
ぼくは手に入れたよ
その中では 泣くことも笑うこともない
くりかえし知っている匂いの中に眠る
目線の高さにぼくは進んで
もとどおりの一日が終わる

 

 

次の次の次

手の中の滴を
ぼくだけに返して
あるいは
ひとつふたつ忘れた状態で
ゆうべ きみと居た時は
こんな気持ちになるなんて 思ってもいなかった

へんな帽子を被って
伏し目がちに思いを募らせれば
きみはまた ぼくを好きだったことを
思い出すだろう

もう何もいらないと思うくらい 苦しい
こんなにも近い距離で
ぼくときみしかいない
白い月も見えない

きみがやってくるというので
真新しいシーツにとりかえて
ぼくは希望どおり
窓辺で昼寝をしたよ

隙をついて出て行った猫は
血を出して帰ってきたよ
赤い点点が家のそこいら中についた
ちゃんと見えたよ おまえの赤が
なかなかに布団を干せない天気がつづき
でも 薄い布団で充分な季節にもなってきている

耳をすませて 言葉のひとつひとつを拾っていく
その声のひとつひとつ その時を前にして

さりげなく 旅に行くのを見送ってくれたきみと
また すぐに 会えるような気がする

笑ったカオは きっとぼくを裏切らない
大きく息を吸い込んで バカみたいに吐き出してやる

 

 

つまらない話

まったく つまらない話かな
とりあえず
きみの知っていること ぜんぶ おしえてよ
毛羽立つ肌もかわいそうだから
ずっとクリームをぬりたくってる

いいかわるいか とかじゃないかもしれないけれど
そういう言い方で言うのなら
わるかったのは きっと ぼくの方だな
ほんとは にこりと笑って別れたかったけど
消えるように ぼくは出てきた
つまらないかい こんな話は

カラカラの風をまとって歩く
カラカラと喉をならして歩く
まっ白い雪がいつかススキノに降りつもれば
やっとわかったぼくが
照れながら歩いてくる

それからの話 はやく聞かせたいな
ああ ほんとうに きみは正しいよ
とても 素敵に見えるよ
ぼくの もごもご話す癖
これくらいは なおればいいのにな
つまらないかい こんな話は

カラカラの風をまとって歩く
カラカラと喉をならして歩く
まっ白い雪がいつかススキノに降りつもれば
やっとわかったぼくが
照れながら歩いてくる

 

 

冷えた夜空

空気が揺れる景色は
ぼくに ここにいろと 言ってるの
ああ 誰のことも 想わないのは
こんなに気持ちがいいんだな
煙を吸い上げて 見上げた空は
キンと 冷えていた

まわってる景色の中で
きっとなにも 手に入れられないけれど
こんな なんでもない気持ちを すり抜けて
ぼくは はじめにもどったというのか
小さな小さな膜の中で
ずいぶん 大げさなカオしてるんだな

あまりにも
闇が 暗過ぎたから
余計に 目をひらいた
そこに形ができるまで
熱いお湯が 何度も思い出させる
なつかしい過去
つよくはならない
よわいままが ほんとうだった

あまりにも
こんな気持ちが つづくのなら
もう それでいいよと 言ってしまうだろう
ぼくが 空気を変えてあげよう
ぼくの目に きみを
うつしてあげよう

 

 


9月の空を見上げる
ドンが飛び去っていったあとのような空だ
夏をいっぱい吸いこんで
ふくれあがった胸も愛おしい
ぼくはなにか うたをうたいたくなるけど
なんのうたも浮かんでこない
いつもそうなんだ こんな時は
そんなぼくと
ずっと一緒に居たかった

きみがノックをする度に
ぼくはイヤなカオをしていたんだな
空が晴れ上がれば
いつもそこに ドンの姿をさがした
そこへぼくを誘いだしてくれるのを 待っていた
高い空に 風が走っていく
高いマンションの ベランダのせんたくものを揺らして

ぼくはいつも
これが最後なんじゃないかって思う
気持ちはどんどん走っていって
いつのまにか
ぼくはそれに 追いつこうとして生きていた
きみが ぼくを見ているんだろうって思って
ぼくはきみを見ていた
きみの言ったことが あまりにもそのままで
ぼくはそのまま 笑って泣いた

きみは それは風だと言う
ぼくが目を閉じている間に
ずっとずっと 遠くへ行ってしまった
空気が だんだん冷たくなれば
ぼくはそれを 心に思うだろう
下へ下へ 体が落ちていく度に
こんなにも 胸が苦しくなれる

 

 

新しい町の夜

一秒一秒
ぼくはもとにもどっていくのか
鏡で見るさ
自分のカオを 何度も何度も
瞼の裏には 札幌か
冷たい冷たい肌が 安心している
自分の手の中で動かしていたものが 転がる

いつだって結局 冷静なくせに
それが自分の中で えらそうにしているのが嫌だよ

人間のものじゃない町の夜は 小さな音がいくつもきこえる

お盆のプラムを食べて
しばらくきみに会いには行けない
この流れは ずっとぼくを試している
それならぼくは さらに大きな流れをつくるさ
毎日が 毎日の夜が
ずっと ぼくを同じ場所へ運んでくれる

いつまでも いままでのこと きっと思い出されるから
今はこうするしかない
この景色と風が 染みついていってるの知っている
でもぼくは お湯に浸かっているみたいに うっとりして
今はひたすらに こうしている

すごく嫌な気持ちになって
電車に乗って 家に帰る
それでもぼくは それで一日の満足をやり抜くのだ
ぜんぶ今まで ぼくをこういう気持ちにさせたの
ぼくのせいだから
なんでもかんでもやって それで その気持ち消していくの

風があっちからこっちへ
この広い場所では
風が走っていく様が よく見える
硬くなった顔 すっかりはとりきれないだろうけど
穴あき心臓で 呼吸しているよ

かなしいとか うれしいとかじゃなくて
生きていようと思うだけさ

全部ぼくのせいだから
いつまでも つづけていけるだろう

 

 

心の中

家の中に居れば
関係のないことばかり
でも心の中は ドキドキ
かわいそうなくらい みじめだ
あの時笑って話していたっけ
どうだったっけ 覚えていないや
ピンとこない言葉ばっかり
その心の中で ぐるぐる
きみでも やはり少し歳をとったね
捨て逃したゴミは また来週

痛い時は痛いだけ
悲しい時は悲しいだけ
泣く時は泣きたい時だけ

心の中は かわいそうなくらい みじめ
だけど きみが 目の前に現れた時は
ぼくはきっと 笑いかけてみせるんだろう
あの街の景色も この町の景色も
いつかぼくの中で 仲良く居座るまで

壁一枚挟んで きみの声を聞く
ぼくは 汚いものじゃないからと 捨てまくっている
ああ 素直さと楽しさはいつでも 平行してやってくる
そいつとうまくやっていたのは 結局
あの頃の ぼくの方さ
ぼくの言う やさしさなんて
もうすでに やさしさなんかではない
夏の匂いがやってくる
確信する度に 幻に見えてくる

 

 

ぼくは自転車で走り過ぎる

少しだけ早い朝の道に 水が撒かれている
晴れた日のコンクリートの濡れた匂い
一日に2回この道を ぼくは自転車で走り過ぎる
散らばった気持ちをひとつにまとめて
それを ぼくはきみに見せようとしている

同じ言葉が何度も何度も 口から吐き出されて
ぼくは風景を ひとつひとつ手に入れていった

きみのことを うまく思い出せなくても
ぼくは今 電車の高架上に立って
遠くて近い夕日に笑いかける

空がいつも同じように 晴れているように思えた
同じうた何度もうたって ぼくは暮らしている

ぼくがぼく自身で これがほんとうだと思えることを
心の中から離れていかないように
毎日 眠っては起きるよ

河川敷から見える建ち並ぶ建物は
知らない建物ばかりで
今 ぼくがどこにいるかなんて 説明できなくなる
でも その必要もなくなってくるんだろう
ほら 水門も近づく
晩ごはんの匂いもしてくる

 

 

ひとりで居た時のこと

隙間だらけの文字で言葉の波を泳いでいる
いつも気づかぬ間に 眠っているみたい
知らないことを知りたい
姿は見えるけど
きみの思いには 触れられないみたい
ただ目の前 水紋がきれい

きみのこと うたにしてうたう
なにもかも ぼくの中に返っていく
目に見える景色は それだけの景色
ひとりで居た時のこと そう 確か
ひとりだったと思うよ

ぼくの心 とろとろ 熱に溶けていく
その中にある季節 だんだん露になっていく

確かなものはほんとうにすべて確かで
好きなものも たくさんあった
キラキラ小麦が輝くような黄金の色

切り放された ひとつひとつの景色を
ここにこうして差し出す時
胸に感覚を宿らせて
言葉の波を泳いでいる

 

 

靴の陰に目線を落として
ほんとうに静かな言葉を聴く
静けさは心地よい
ほら ざくざくの道を辿って冬の思い出

曇りのままがよいけれど
夕焼けを待つぼくの心に
きみのうたは流れる
悲しさをそのまま でも むやみやたらにではなく

夜な夜なモヤモヤ 渦巻く気持ちに
きみは知らぬと顔を背ける
あたりは一面に夜露に濡れる
自分で自分を持ち上げるような そんなやり方だ

白い籠で黒いトリが育つ
毎朝 いろんな夢見て目を覚ます
ちょっとでも触れたらすぐ崩れるわ
だんだん漂ってる安っぽい想いだ

 

 

夏休み

窓だけが ぼんやりと開いている
ユラユラと ぼくは波打っている気分
ツメも髪の毛も あっという間に伸びていって
しばらく会わなくなれば きみのことも忘れていくさ
ほんとうに退屈な夏休み

守り過ぎたものを 少しづつ解き放っていって
ああ ベランダに匂いが充満
きみのこと こんなふうに 思い返すなんて

水撒きのおわった庭 いっぱい夕日が落ちる
ずっとずっと昔のこと 思い出していた

日曜日の雨の音 目に見える滴
映画が夜を濡らしていく
黒い黒い匂い

感情の波が声を上下に揺らす
言葉はだんだん感覚的なものになっていって
胸に穴があく

夕日の匂いが 顔に染み入って
一日の満足をやり抜く

 

 

ハヤオ

部屋の中に居たから 気づかなかったよ
外はもう明るくなっていた
ぼくはやっぱり 待ってしまっているのかもしれない
温度は必ず下がり 心をすっかり染めらせて
ああ! ぼくはこの時に生きていたい!
と思った

きみとの会話を 何度も頭の中で繰り返している
冷えたコンクリートを踏んで歩いた
やがて光が土を温めて 匂いが立ち籠る
染まる自分の顔が 愛おしかったよ
きみが誰かに ぼくの話をしているように

ぼくの思いは
いつも一人よがりに ここにあるだけだけど
何にも知らないきみが ぼくをわかったよ
気を使わずにやろうと思ったよ

ぼくがぼくに対してしっかりしていれば
大丈夫だよ





いつもそんな風景だった

階段を下りると もうすでに雨の匂いがして
街は湿気を含んで腫れ上がる
この身体から離れるものなんてないさ
ぼくは スピードを上げなくちゃいけなくなる

風がぼくの口を塞いで すべてを大袈裟にするんだ
ぼくは木に鎖をぐるぐると巻きつけて
違うんだ 違うんだって言ったよ

夜になれない日があった
玄関の鍵を閉めて 部屋の中はとても安心だった
ストーブをつけて チョコレートを食べた

ああ あんな顔 こんな顔
土が見える道
思い出したら いつもそんな風景だった





シンバン

ただ その寂しさゆえに
きみは必死なだけだってことは わかってるんだ
でも ぼくはぼくでやっていくよ
ぼくの中にあるこの感覚を
保つための ただそれだけの手段
忘れられないまま 湿った街は遠くへ
苛立ちは消して ただ思い出せ
映画の夜 朝は目覚めて
ああ お互いのたのしい気持ちで
お互いがうれしくなれるように
いだきあうのは よいことだよ

風は生暖かくなっていく 水たまりができていく
足は浮かぶように走る
何も考えられなくなったあと
すべてが突き刺さる





夕暮れ

当たり前に
自分のやることすべては
許せてしまうものだな
きみのことなら 許せないことばかりなのに

素敵な人の言葉を 少し集めれば
わりと乗りきれるものなんだな
ぼくにはもう 何も言う事がなくなった

夏だけずっと思い出していれば よかったんだ
図書館はずっと涼しくて
何も動かなかった
ぼくは建物たちを抜け
夕暮れを追いかけた
一日の終わりは いつも同じ気持ちで
物足りなさを消すことだけを
考えていた

煙突はすっかり小さくなって
キレイな白い煙が出て 風に流れていく
川へ出る道は 線路が大きな範囲で敷かれていて
ぼくは いつも大きく回って歩くんだ
きみと 今日みた夢の話をするために
ぼくは家を出る





定期

汗ばむ肌に 雨が落ちて
匂いが変わる ぼくはまた走る
夕方にならない 夏の昼間

そんなことを 思い出していたんだ
何ひとつだって ダメになっていない
揺るがないし 悲しくないし

定期的なこの気持ちは
たぶんきっといつまでもつづく
ああ ぼくはその裏側の気分を
持続させたいよ

だんだん嫌な気持ちになってしまう
大きな声で きみを呼べばよかった
ぼくのアタマで回る
この景色は切ないだけ?





雪が降る前

きみを責めてしまうのは間違いだよ
きみを悲しませるのは間違いだよ
でも ぼくはぼくをどうにかしなくちゃ
気持ちを外へと向けて

広がる水にそっと指を触れて
そんなことしかぼくはできなかったけど
ごまかしながらも きみに助けを求めていたよ
遠くなっていく
雪が降る前みたいな
そんな感じだ 今

安い洗剤をたくさん使って食器を洗う
日のあたらない窓は
ぼんやりと薄暗くなっていく
外へ出ても何も変わらないのなら
ぼくはこの部屋を
ストーブの暖かさでぼやけさせてしまおう





フラッシュバック

水面に広がる光は すべてを白くしてしまいそうだな
ぼくがもう少し この水に浸かっていれば
そう 温度はすぐに上がっていったのにな

きみの数知れない言葉の中で
ぼくはねじり潰されてしまいそうなんだよ
何も言えないぼくのカオは
どんなふうに きみに見えていたのかな

昼と夜の8時間で
航空ショーと夜行バス
きらきらと白い光 ぼやけた音になって
ぼくの短い感覚が終わる

夏はあっという間におわる
生々しい自分の足を眺めて 少し笑った
どんなきみだってうれしくて いつも夢にまでみるさ
秋になると ぼくは思う





ライトの中の夜は永遠に

きみの言葉は
ひとつも聴いていなかった
ぼくは水の中にいるみたいだった
きみはライトの中にいる

着々と日々を過ごして
意識を持って きみを嫌な思いにさせた
意識を持って ぼくを苛立たせた

ぼくらの思いが
お互いに同じくらいだと
わかっていても

このままじゃ
ぼくは
とてもくだらない
気持ちになってしまうよ





朝野球

きみがさ
ずっとずっと苦しくなって
誰とも居れなくなって
遠く遠くを思い描くも
ぼくは 車じゃ どこにも行けない
朝一野球してる人がいる
少し広い場所で しばしの行いをした

ずっとずっと 古い空がつづく
きみが見つめる夕日は 遠くなっていく
夏の夜には
必ずきみを思い出そう
必ず思い出そう

枕のカバーに染みついた
ぼくの前に住んでいた家の匂いは
すぐに消えていった





花火師

この気持ちがなくなったら
どこかへ行けなくなるから
でも このままじゃ
きみのこと
嫌いになってしまうかもしれないな

ああ ぼくは花火師になりたいよ
しっかりとした気分で
楽しみたいよ

ぼくは ほんとうに嫌なヤツで
きみに 大事に思われてきたことも
すっかり忘れて
次々 新しい世界へと染まっていく

もっとつよく思われないと 満足しない
一体なにが欲しいのかわからない
なんて考えるのは もうやめよう
ぼくは夕日だ
それ以外は なんでもない
心に思うことは
消えるまで
そのままにしていよう




青調合

いい考えなんて
ひとつも思い浮かばないけど
外へ出て 外へ出て
思い出す匂いは なんだ
なにも治っちゃいないさ
なにも治まっちゃいないさ
それでも、とぼくは 言いたいところなんだけれども

公園は静かで 開けてて
少し寒くて
それでもすぐに
汗をかくぼくらの体は
かなしくて いとおしくて
わけがわからないよ

なにも感じられなくなったのかもしれない と思う時も
みんなの中へ出ていかなくちゃいけない時も
それでも、とぼくは 言いたいところなんだ





焼尻

どんなに ひどいやり方でも
時間が なんでもないことにする
夜になると ぼくの汗もひき
これだってまた
なんでもないことになる

ぼくは思い出す
島から見た海を
ぼくは思い出す
暑さの中の蜃気楼を

ぼくは ぼくを追いつめるものに
勝てないでいる
埃で黄色くなった紙
力ないきみの体の側で
ぼくは すべての正体を知ろうとする

思い出している
島から見た海を
思い出している
暑さの中の蜃気楼を





雨の日の花火

こわれたけど 元どおりか
雨の日の花火
柵を乗りこえて
漂う湿った空気を嗅いで
雨の花火

鈍く飛んだぼくのボールが
バイクが遠ざかる 様に重なる
とても眩しくて
コントロールがむずかしいな
それでも3度目の ボール投げ

家を離れて
白いシーツの布団で眠る
胸が苦しみますように

ガラスの屋根に 枝が擦れて
泳ぐあのこの背中に 影を動かす
キレイだな
大切なぼくの時間を
浸かる水は温くなる
風が ここには
入らないんだ



白くする

もうそのまま
きみの中へ溶ける 自分の一部分と
知らないことに 気づかないことを 並べて見分ける

ただどうしても 悲しくなりたかっただけで
そう願わなくても そのまま流れていけるんだ

もっと たくさんの服に巻きこまれていこう
そしてそれが すべてだと思う

ぼくがきみだけに これ以上のことをしたいと思えるなら
たくさん流れつくもので それを白くする

見えないまま 流れていった景色とその感覚
雲のようなものだとしても 同じ色 そう思いたい

きっともうはずせられない 細い空気の棒と
このままつづけていく ぼくの手の形

ずっと思ってた そうしないようにはできなかった
そしてそれが すべてを残す

ぼくがぼくだけに これ以上のことをしたいと思えるなら
見える人と自分のカオ それを白くする